第66巻第05号
普通は電気伝導で見る量子ホール効果を,「光で見る」ことは できるだろうか.理論的には,下図のように,量子ホール系(強磁場H中の2次元電子系)に光(AC電場)を当てたときの光学ホール伝導度σxy(ω, 〓F)を,フェルミ・エネルギー〓Fと光の角周波数ωの2変数関数としてプロットすると,平坦な部分をもつ階段状になることが示される.実験的には,上図 のように,直線偏光(赤い波線)を量子ホール系(青い面で表示,回転運動は電子のサイクロトロン運動を象徴)に当てると,透過後は偏光面が回転 (Faraday回転)し,その回転角θ(大きさは微細構造定数αの程度)から量子ホール系の光学ホール伝導度を測定することができる.これが最近,テラ ヘルツ(THz)領域の実験により観測された.詳細は本号に掲載されている森本高裕氏らの「光で見る量子ホール効果」の記事を参照のこと.
■東日本大震災に際して
永宮正治 337
■口絵
今月号の記事から 339
■巻頭言
・JPSJの編集 - 著者とレフェリー -
川畑有郷 341
■「水からの伝言」をめぐって
天羽優子,菊池 誠,田崎晴明 342
■解 説
・単分子接合物理の最前線
木口 学,谷口正輝 347
伊藤克司 353
■最近の研究から
・幾何学的フラストレート磁性体にひそむ階層的なスピン分子励起
富安啓輔,山田和芳 361
・光で見る量子ホール効果
森本高裕,池辺洋平,島野 亮,青木秀夫 365
・詳細つりあいを満たさないモンテカルロ法
諏訪秀麿,藤堂眞治 370
・テラヘルツ天文学を切り拓く受信機技術
鵜澤佳徳,山本 智 375
■座談会:物理学会託児室この10年 380
■JPSJの最近の注目論文から Vol. 80 (2011) No. 2より
川畑有郷 386
■追 悼
・大塚泰一郎先生を偲んで
佐藤武郎 389
■新著紹介 390
・表紙画像掲載にあたって:杉 本 茂 樹 〈新著紹介小委員会委員長〉
・なぜ科学を語ってすれ違うのか--ソーカル事件を超えて:国府田隆夫
■会員の声
・最先端物理入門書への本誌書評の効用,テキストの寿命と著者の責任 391
■編集後記 島野亮