第67巻 第02号
表紙から
大型月探査プロジェクト「かぐや(セレーネ)計画」は,アポロ計画以来最大規模の本格的な月の探査計画である.2007年9月14日にH-IIAロケットにより種子島宇宙センターから打ち上げられ,約1年半にわたり月の観測を行い2009年6月11日に月面の表半球南側に計画的な落下をして,その使命を終えた.主な目的は,月の起源と進化を解明することと,将来の月の利用のための基礎データの取得,月周回軌道への人工衛星投入や軌道姿勢制御など技術的実証を行うことである.「かぐや計画」では,主衛星「かぐや」(右下の写真(JAXA提供):環境試験中の月探査機「かぐや」(プロトフライトモデル))と2機の子衛星(「かぐや」の上部に取り付けられた二つの8角柱の子衛星)であるリレー衛星「おきな」とVRAD衛星「おうな」で構成されている.「かぐや」には14種類の科学観測機器が搭載され,月表面の元素組成,鉱物組成,地形,表面付近の地下構造,磁気異常,重力場の観測を全域にわたって行い,これまでにない高精度の観測に成功した.それらの観測結果はScience誌などの特集号にまとめられている.それらの結果の一つに,レーザ高度計(LALT)によって得られた月の地形図を左上に示した.LALTは,「かぐや」と月面の間の距離を精密に測定して,従来の観測を遥かに凌ぐ高い精度で月面の起伏情報を提供した(H. Araki, et al.: Science(2009)).また,表紙の左中央部にはガンマ線分光計GRSで観測されたウラン元素(U)の計数率分布の全球図を示した.中央部が月の表側,左右の部分が月の裏側を表す.図を見てわかるように,天然放射性元素Uは表側の嵐の大洋や雨の海周辺域(PKT:図の中央左の地域)に濃集している.次にU濃度が高い地域は,南極-エイトケン盆地(SPAT:図中右下部及び左下部の裏側南半球),それ以外の地域はU濃度が低いことが明らかになった.このことから,月は地質学的に3つの領域で特徴づけられる.詳細は本号に掲載された長谷部信行,山下直之氏の「解説」記事を参照のこと.
■口絵
今月号の記事から 73
■巻頭言
副会長に就任して 家 泰弘 77
■解 説
里帰りした「かぐや」の見たもの 長谷部信行,山下直之 78
宇宙揺らぎの非ガウス性とインフレーション 向山信治 85
励起子ポラリトンの量子凝縮 山本喜久,宇都宮聖子 96
■最近の研究から
宇宙の初期ゆらぎは非ガウス分布か? 日影千秋 108
■学会報告
2011年秋季大会シンポジウムの報告 領域委員会 112
■JPSJの最近の注目論文から Vol. 80 (2011) No. 11より 川畑有郷 123
■学界ニュース
第52回藤原賞:十倉好紀氏 125
第15回(2011年)久保亮五記念賞:永尾太郎氏 香取眞理 125
第5回湯川記念財団・木村利栄理論物理学賞:千葉 剛氏 辻川信二 125
第6回凝縮系科学賞受賞:北川健太郎氏 北岡良雄 126
■談話室
第51回生物物理若手の会夏の学校開催報告 山本暁久 126
2011年度原子核三者若手夏の学校活動報告 上田宏史,福島 啓,谷村雄介,磯村明那 128
■新著紹介 131
・超重力理論;超弦理論における役割:今 村 洋 介
・プラズマ原子分子過程ハンドブック:赤 塚 洋
・High Energy Astrophysics 3rd Edition:郡 和 範
■会員の声
シンポジウム「物理学者から見た原子力利用とエネルギー問題」について 133
■編集後記 北島昌史
大型月探査プロジェクト「かぐや(セレーネ)計画」は,アポロ計画以来最大規模の本格的な月の探査計画である.2007年9月14日にH-IIAロケットにより種子島宇宙センターから打ち上げられ,約1年半にわたり月の観測を行い2009年6月11日に月面の表半球南側に計画的な落下をして,その使命を終えた.主な目的は,月の起源と進化を解明することと,将来の月の利用のための基礎データの取得,月周回軌道への人工衛星投入や軌道姿勢制御など技術的実証を行うことである.「かぐや計画」では,主衛星「かぐや」(右下の写真(JAXA提供):環境試験中の月探査機「かぐや」(プロトフライトモデル))と2機の子衛星(「かぐや」の上部に取り付けられた二つの8角柱の子衛星)であるリレー衛星「おきな」とVRAD衛星「おうな」で構成されている.「かぐや」には14種類の科学観測機器が搭載され,月表面の元素組成,鉱物組成,地形,表面付近の地下構造,磁気異常,重力場の観測を全域にわたって行い,これまでにない高精度の観測に成功した.それらの観測結果はScience誌などの特集号にまとめられている.それらの結果の一つに,レーザ高度計(LALT)によって得られた月の地形図を左上に示した.LALTは,「かぐや」と月面の間の距離を精密に測定して,従来の観測を遥かに凌ぐ高い精度で月面の起伏情報を提供した(H. Araki, et al.: Science(2009)).また,表紙の左中央部にはガンマ線分光計GRSで観測されたウラン元素(U)の計数率分布の全球図を示した.中央部が月の表側,左右の部分が月の裏側を表す.図を見てわかるように,天然放射性元素Uは表側の嵐の大洋や雨の海周辺域(PKT:図の中央左の地域)に濃集している.次にU濃度が高い地域は,南極-エイトケン盆地(SPAT:図中右下部及び左下部の裏側南半球),それ以外の地域はU濃度が低いことが明らかになった.このことから,月は地質学的に3つの領域で特徴づけられる.詳細は本号に掲載された長谷部信行,山下直之氏の「解説」記事を参照のこと.
■口絵
今月号の記事から 73
■巻頭言
副会長に就任して 家 泰弘 77
■解 説
里帰りした「かぐや」の見たもの 長谷部信行,山下直之 78
宇宙揺らぎの非ガウス性とインフレーション 向山信治 85
励起子ポラリトンの量子凝縮 山本喜久,宇都宮聖子 96
■最近の研究から
宇宙の初期ゆらぎは非ガウス分布か? 日影千秋 108
■学会報告
2011年秋季大会シンポジウムの報告 領域委員会 112
■JPSJの最近の注目論文から Vol. 80 (2011) No. 11より 川畑有郷 123
■学界ニュース
第52回藤原賞:十倉好紀氏 125
第15回(2011年)久保亮五記念賞:永尾太郎氏 香取眞理 125
第5回湯川記念財団・木村利栄理論物理学賞:千葉 剛氏 辻川信二 125
第6回凝縮系科学賞受賞:北川健太郎氏 北岡良雄 126
■談話室
第51回生物物理若手の会夏の学校開催報告 山本暁久 126
2011年度原子核三者若手夏の学校活動報告 上田宏史,福島 啓,谷村雄介,磯村明那 128
■新著紹介 131
・超重力理論;超弦理論における役割:今 村 洋 介
・プラズマ原子分子過程ハンドブック:赤 塚 洋
・High Energy Astrophysics 3rd Edition:郡 和 範
■会員の声
シンポジウム「物理学者から見た原子力利用とエネルギー問題」について 133
■編集後記 北島昌史