日本物理学会誌

第67巻 第10号

cover-12-10.jpg■表紙の説明
写真はダリア「美榛」(みはる:上段左端)をオリジナルの品種として窒素イオンビームを照射し改良した多様な変異花である.加速器で作る重イオンビームを植物や微生物に直接照射して,DNA変異を誘発する品種改良法は,日本独自の技術として発展してきた.広島市では,電照栽培で冬に切花ダリアの生産を行っているが,この栽培方法に向く品種が限られるため,重イオンビームによる品種改良に取り組んだ.下段左から2つ目の花びらの数が増え濃赤桃色となった変異体は形質が安定しており,「美榛」より大輪化し暖色系で豪華となった.そこで愛称「ワールド」として広島市中央卸売市場で試験販売したところ好評であった.新たに重イオンビームにより誘発されるのはDNA欠失変異が多い.白抜き文字で示した配列は炭素イオンビーム照射で誘発したシロイヌナズナhy変異体の例で,5塩基対欠失(右下)を示した.詳細は本号に掲載されている阿部知子氏らの「交流」記事を参照のこと.

■口絵
今月号の記事から 677

■巻頭言
PTEPの出発に際して初代編集委員長からのお願い 坂井典佑 679

■交 流
重イオンビームによる品種改良法の開発から遺伝子機能解明へ 阿部知子,平野智也,風間裕介 680

■最近の研究から
第一原理計算で探るコヒーレントフォノンの生成機構  篠原 康,乙部智仁,岩田潤一,矢花一浩 685
光格子中のボース・フェルミ混合原子気体が示す多様な量子相 山下 眞,稲葉謙介 690
有機半導体界面における浅い局在状態密度分布のスペクトル解析 長谷川達生,松井弘之,ミシェンコ アンドレイ 695
ガラスの硬さを計るレプリカ理論 吉野 元 699
紐状分子の非平衡ダイナミクス:細孔通過現象を中心に 坂上貴洋,齋藤拓也 705
GRB起源PeV-EeVタウニュートリノ初探査 浅岡陽一,佐々木真人 710

■JPSJの最近の注目論文から
6月の編集委員会より 安藤恒也 715

■学界ニュース
2012年フンボルト賞:谷畑勇夫氏, 岸本忠史 718
2012年フンボルト賞:大森賢治氏, 百瀬孝昌 718

■新著紹介 719
・Quantum Measurement and Control : 沙川 貴大
・磁性入門 : 佐久間 昭正
・Heisenberg in the Atomic Age; Science and the Public Sphere : 後藤 邦夫

■AAPPSだより
アジア太平洋物理学会連合(AAPPS)と第12回アジア太平洋物理会議(APPC12)開催について 721

■会員の声
震災復興ののろし 722

■編集後記 佐藤 丈