日本物理学会誌

第68巻 第2号

cover-13-02.jpg■表紙の説明
「渦」は宇宙に遍在する構造でありながら,いまだ謎にみちている.天体は自然に磁気圏を形成し(磁場は電磁場の渦である),そこでは内側の密度が高い方へと粒子が逆拡散して「自発的な閉じ込め」が起こる.これは磁化したプラズマの粒子が感じる空間がダイポール磁場の強い局所性のために歪んでいるからだ.つまり「渦」は時空であり(ミクロ世界のシンプレクティック幾何がその正準形式である),マクロな構造として現れる「渦」はそれ自身が定める時空によって一つの階層(葉層)を形成している―こう考えることでマクロ世界の複雑現象に新しい見方が生まれる.東京大学のRT-1実験装置(写真)では,真空装置内に磁気浮上させた超伝導マグネットでダイポール磁場を発生させ,天体磁気圏を模したプラズマ閉じ込めを研究している.詳細は本号に掲載されている吉田善章氏の「交流」記事を参照のこと.


■口絵
今月号の記事から 71

■巻頭言
物理学会の裾野を広げ,発信力を強めよう 斯波 弘行 73

■交流
時空の問題として見るプラズマ物理:〈渦〉とは何かをめぐって 吉田 善章 74
歴史的事象の統計的考察と画期的な推測法の進展 赤平 昌文 81

■解説
柔らかい粒子の電気泳動と静電相互作用 大島 広行 89

■最近の研究から
磁気リコネクションにおけるプラズマの熱力学特性 沼田 龍介 98
ブラックホールは天然の粒子加速器になるか? 原田 知広,木村 匡志 102

■学会報告
2012年秋季大会シンポジウムの報告領域委員会 107

■JPSJの最近の注目論文から
10月の編集委員会より 安藤 恒也 115

■学界ニュース
第16回久保亮五記念賞:小林研介氏 齊藤 圭司 118

■追悼
山上隆正先生を偲んで 吉田 哲也 119

■新著紹介
シュリーファー超伝導の理論 : 黒木 和彦 120
電磁気学の基礎I : 前野 昌弘 120
電磁気学の基礎II : 前野 昌弘 120
ニールス・ボーアの時代1 : 亀淵 迪 121
ニールス・ボーアの時代2 : 亀淵 迪 121


■会員の声
物理学者の社会的責任:科学リテラシー教育について 122