日本物理学会誌

第68巻 第4号

cover-13-04.jpg■表紙の説明
光周波数標準の光ファイバ網による伝送の一例(上図).情報通信研究機構(NICT)小金井本部と東京大学(東大)本郷キャンパスは直線距離にして24 km離れており,共にストロンチウム(Sr)光格子時計が動作している(右下写真はNICTの装置及びトラップされたSr原子).この2拠点間は全長60 kmのダークファイバで結ばれており,NICTの光格子時計の生成する光信号を光周波数コムにより通信帯波長に変換した後東大へ伝送した.受信側(東大)では届いた光の一部を送信側(NICT)に送り返し,伝送中に生じた位相雑音を送信側において検出・補償している.伝送された光と東大の時計の生成する光のビート周波数を20秒間程度測定するとNICT側の時計が3~4 Hz程度高い光周波数を生成することが検出できる.この周波数差は両拠点の標高差56 mによる一般相対論的効果でほぼ説明でき,さらに積算を重ねることによって従来のCsベースの絶対周波数測定(NICT・東大を含む日米仏独5拠点)では困難な16桁の不確かさでの周波数一致が確認された(左下図).詳細は本号に掲載されている井戸哲也氏らの「解説」記事を参照のこと.

■口絵
今月号の記事から 197

■巻頭言
論文閲読のすすめ 安藤恒也 199

■交流
南部・ゴールドストーンボソンの統一的理解 渡辺悠樹,村山 斉 200

■解説
時刻・周波数標準の遠距離比較伝送技術の現状と将来 井戸哲也,藤枝美穂 209

■実験技術
原子分解能ホログラフィー 林 好一 217

■最近の研究から
ヒ素の化学を利用した鉄系超伝導体の新物質開発 野原 実,工藤一貴 226
鉄系超伝導体における「軌道の物理」の新展開 大成誠一郎,紺谷 浩 231

■JPSJの最近の注目論文から
12月の編集委員会より 安藤恒也 236

■談話室
誤解されているブラケット―共役演算子をめぐって 北野正雄 239
第52回生物物理若手の会夏の学校報告 柴崎宏介 241
2012年度原子核三者若手夏の学校活動報告 嶼田健悟,川名清晴,鈴木裕貴,髙橋将太 243

■国際会議
第20回少数粒子系物理国際会議FB20 相良建至,肥山詠美子,民井 淳 246

■追悼
金森順次郎先生を偲んで 寺倉清之 247

■新著紹介 248
量子力学の反常識と素粒子の自由意思 : 谷村 省吾
密度汎関数法の基礎 : 河野 裕彦
Principles of Laser Spectroscopy and Quantum Optics : 盛永 篤郎