日本物理学会誌

第70巻 第7号

■表紙の説明cover-15-07.jpg

横紋筋(骨格筋,心筋)は,アクチンとミオシン分子モーターが規則的に自己集合したサルコメア(筋節),それが直列接続した筋原線維とその束からなる,スメクチック様の液晶構造に似た階層構造を形成している.横紋筋収縮系は,収縮と弛緩の中間活性化条件で自励振動(SPOC)する.1 分子システムは確率的に働くナノマシンだが,サルコメアに組み込まれると,集団で自発振動しうる(下図:骨格筋原線維内のサルコメアが振動する位相差顕微鏡連続画像.これらの画像は,緑色で疑似カラー表示している).一定の化学的条件下で,各サルコメアは急速な伸長と遅い短縮からなるノコギリ波状に一定周期で振動する.筋原線維では,サルコメア振動が同期したり,波として伝播したりといった様々な運動モードが現れる(上図:SPOC 波が繰り返し伝播する筋原線維の束).SPOC特性は,心拍の基盤となる可能性がある.SPOC の数理モデルを含めて,詳細は本号に掲載されている石渡信一氏,佐藤勝彦氏の「交流」記事を参照のこと.

■巻頭言
オンライン,オンライン 大槻東巳 ...... 505

■現代物理のキーワード
ホログラフィー原理―ブラックホールが指し示す量子重力への道筋― 関野恭弘 ...... 508

■交 流
ゲージ・重力対応で探る強相関系の非平衡物理学 中村 真 ······ 510

心筋収縮系にみる自励振動現象SPOC 石渡信一,佐藤勝彦 ······ 519

■最近の研究から
スピン偏極は移るよ,どこまでも:原子気体の光ポンピングによる金属塩の核スピン偏極
石川 潔 ······ 530

インビーム γ 線核分光による新魔法数の発見
武内 聡,デービッド・ステッペンベック,宇都野 穣 ······ 535

銀河系内で初めての極超新星の痕跡を発見か? 木村 公,常深 博,冨田 洋 ······ 540

高圧ねじり加工による金属ガラスの構造若返り 土谷浩一,孟 凡強,横山嘉彦 ······ 544

JPSJ の最近の注目論文から
3月の編集委員会より 安藤恒也 ...... 549

新著紹介 ...... 563
Gauge/String Duality, Hot QCD and Heavy Ion Collisions:菅本晶夫
重力とエントロピー;重力の熱力学的性質を理解するために:磯 暁