■表紙の説明
近年，最先端の微細加工技術を用いて作製した微小なメカニカル共振器に関する研究が大きな広がりを見せている．微小メカニカル共振器の特徴は以下の2点にある．①ギガヘルツ領域まで高周波化できるため，量子力学的な振る舞いを示す調和振動子が巨視的な物理系として実現できること．②共振器構造を形成することにより大きな非線形性を出現させ，周波数変換や双安定状態の形成など，新しい機能を持つメカニカル構造が実現できること．表紙は構造の非線形性を活用し，音波のレージング動作（SASER）の原理実証を行った素子の電子顕微鏡写真と発振スペクトルである（I. Mahboob, et al.: Phys. Rev. Lett. 110（2013）127202）．共振器を作製する材料としては，圧電効果と高い機械的安定性を持つGaAs/AlGaAsヘテロ構造を用いている．閾値以上の強度の電気ノイズを入力すると，幅80 mHzの鋭いメカニカル振動が引き起こされる．詳細は本号に掲載されている山口浩司氏の「解説」記事を参照のこと．

■巻頭言
改革が求められるJr.セッション　　香取浩子 ...... 549

■現代物理のキーワード
コスタリッツ-サウレス転移　　宮下精二 ...... 552

■解　説
非線形マイクロ・ナノメカニカル共振器の物理と応用　　山口浩司 ...... 554

■最近の研究から
核量子性が顕在化する水素量子凝集系の量子分子動力学法と新描像―孤立分子から固体まで―
金　賢得，安藤耕司 ...... 563

粘性流体中を沈降する液滴の分裂と変形　　下川倫子，坂口英継 ...... 570

■実験技術
超音波で電気・磁気物性を可視化する　　生嶋健司，山田尚人 ...... 576

■話　題
物理学会，どうせやるなら... ―第72回年次大会（2017年）の裏側―
山中　卓 ...... 582

■JPSJの最近の注目論文から
最近出版された招待論文から　　上田和夫 ...... 586

■PTEPの最近の招待・特集論文から
2017年5月号より　　江口　徹 ...... 587

■変わりゆく物理学研究の諸相
―日本物理学会設立70年の機会に日本における物理学研究の転換点をふりかえる―
『研究の民主化』とは何だったのか　　高岩義信 ...... 588

■学会報告
第72回年次大会（2017年）　招待・企画・チュートリアル講演の報告
領域委員会 ...... 593

■学界ニュース
科学技術分野の文部科学大臣表彰 ...... 600

■追　悼
小林澈郎先生を偲んで　　近重悠一，南方久和 ...... 601

■新著紹介 ...... 602
Cosmic Rays and Particle Physics（2nd Edition）：浅野勝晃
自然世界の高分子；物理現象から生命の起源まで：山口哲生

■会員の声 ...... 604