日本物理学会誌

第73巻 第10号

cover-18-10.jpg■表紙の説明
表紙の事象は,LHC・ATLAS実験にて取得した,W±ボソン随伴過程で生成されたヒッグス粒子が,bクォーク対に崩壊した事象の候補である.ATLAS検出器の構造体を灰色,測定された荷電粒子の飛跡を橙色,電磁(ハドロン)カロリメータでのエネルギーを水色(黄色)で示す.左側の二つのジェットはbクォーク由来と識別・再構成され,この不変質量は124 GeVであり,ヒッグス粒子の候補である.右側はW粒子の候補で,横運動量151 GeVの電子(右側の水色)と消失横運動量320 GeVのニュートリノ(点線)から構成されている.本解析により,ヒッグス粒子とクォークの湯川結合による崩壊事象の兆候確認に至った.詳細は本号に掲載されている江成祐二氏らの「最近の研究から」記事を参照のこと.(図はATLAS collaboration, JHEP 12, 024(2017)より転載)

■巻頭言
領域委員長として  勝本信吾 ...... 687

■解 説
電子相関とスピン軌道相互作用が生み出す吸着分子の新奇な磁性  
南谷英美,高木紀明 ...... 690
共振器量子電気力学で強磁性体を制御する  宇佐見康二,中村泰信 ...... 700

■最近の研究から
LHC実験が解き明かす真空の本質~ヒッグス粒子の精密測定~
江成祐二,浅井祥仁,花垣和則 ...... 710
正四角台塔をユニットに持つ反強磁性体が示す電気磁気効果
加藤康之,木村健太 ...... 715
グラフェン光周波数エレクトロニクス  樋口卓也 ...... 720

■JPSJの最近の注目論文から
6月の編集委員会より  上田和夫 ...... 726

■談話室
此岸と彼岸の間で  小田垣 孝 ...... 729

■学界ニュース
第59回藤原賞:永長直人氏  前川禎通 ...... 730

■追 悼
福井崇時先生を偲んで~放電箱の誕生とその発展~  政池 明 ...... 731

■新著紹介 ...... 732
Nonequilibrium Many-Body Theory of Quantum Systems;A Modern Introduction:松尾 衛
プラズマ物理科学:吉村信次
多粒子系の量子論:大井万紀人