第74巻 第8号
■表紙の説明
ニュートリノは未だ謎の多い粒子であり,その未知性質の解明は素粒子の標準理論を超える新たな物理の創出に繋がるものと期待されている.ニュートリノを,大型加速器や大型検出器を使わないで,レーザーを用いて小規模実験室で検出する新しい試みが進行している.鍵を握るアイデアは,極めて稀な過程を巨視的量子干渉性に基づいて増幅する機構にある.最近,水素分子の振動準位を利用して,この増幅機構の原理検証実験に成功した.得られた増幅率は18桁を凌駕する.表紙写真(下部)は,この検証実験に用いられたレーザー装置の外観である.また写真(上部)は,水素標的から放出されるラマン高次光で,標的集団の量子干渉性の発達を示す.詳細は本号に掲載されている田中実氏らの「最近の研究から」記事を参照のこと.
■巻頭言
物理学史資料委員会について 岡本拓司 ...... 521
■最近のトピックス
モアレ・グラフェンと超伝導――炭素系を舞台としたエキゾチックな多体問題の可能性
越野幹人 ...... 524
■シリーズ「人工知能と物理学」
複雑系情報処理としてのAI研究とその方法論 中島秀之 ...... 526
■解 説
タンパク質複合体構造の形成・解離メカニズムと予測
竹村和浩,畑 宏明,北尾彰朗 ...... 533
■最近の研究から
ブラックホールからエネルギーを引き抜く――Blandford-Znajek機構の本質
木下俊一郎,伊形尚久 ...... 542
原子からニュートリノを引き出せるか――コヒーレンスの新奇な応用
田中 実,笹尾 登,吉村太彦 ...... 548
一軸応力で磁化と電気分極を選択的に生み出す
中島多朗,徳永祐介,有馬孝尚 ...... 554
■話 題
第74回(2019年)年次大会 中西 秀 ...... 560
■JPSJの最近の注目論文から
4月の編集委員会より 宮下精二 ...... 563
■歴史の小径
秩序・無秩序現象の計算機実験――50年前に考えられたこと
小田垣 孝 ...... 568
■学会報告
第74回年次大会(2019年) 招待・企画・チュートリアル講演の報告
領域委員会 ...... 570
■学界ニュース
第109回日本学士院賞:永嶺謙忠氏 三宅康博 ...... 577
科学技術分野の文部科学大臣表彰 ...... 577
■談話室
トポロジカル量子物性物理学への歩み 甲元眞人 ...... 578
■新著紹介 ...... 581
荒勝文策と原子核物理学の黎明:小長谷大介
ゲージヒッグス統合理論;素粒子標準理論のその先へ:林 青司