日本物理学会誌

第75巻 第5号

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■表紙の説明
表紙は,金属探針を一端に取り付けた片持ち梁を,その共鳴周波数で加振させながら,金属表面上の一酸化炭素分子に近づけた時の様子を示している.金属探針先端と一酸化炭素分子との間に力が働くと,片持ち梁の共鳴周波数が変化する.これを利用して,二体間に働く力を原子スケールの空間分解能で測定することができる.このような相互作用は,同時に金属表面上の一酸化炭素分子の振動エネルギーを変化させる.分子振動のエネルギー変化は,金属探針と金属表面との間に電圧を印加することで流れるトンネル電流を,電圧差の関数として精密に測定することで追跡することができる.このような単一分子に働く力と振動エネルギーの関係は,分子振動を二重振り子として取り扱う古典的なモデルにより大変よく説明できることがわかった.詳細は本号に掲載されている岡林則夫氏の「最近の研究から」記事を参照のこと.


■巻頭言
産業界への還元  大友季哉 ...... 261

■解 説
ゲージ理論を行列模型を用いて調べる――ラージN極限への挑戦
大川正典 ...... 264

■最近の研究から
カルマン旋回流の確率カオス  佐藤 譲 ...... 274
走査型トンネル顕微鏡と原子間力顕微鏡の融合による単一分子の振動分光
岡林則夫 ...... 279
相関に記憶される情報と量子情報カプセル  山口幸司,堀田昌寛 ...... 284
高次トポロジカル絶縁体の物理――角に出現する新奇なギャップレス状態
江澤雅彦 ...... 289

■話 題
重力波望遠鏡KAGRA始動  大橋正健 ...... 295
量子アニーリングや関連技術のいまと未来――AQC2019参加報告
田中 宗,白井達彦,藤井啓祐 ...... 299

■ラ・トッカータ
タイ王国での研究生活  礒野 裕 ...... 303
物理から介護へ     吉岡由宇 ...... 305

■新著紹介 ...... 307
構造物性物理とX線回折:山崎裕一
固体電子の量子論:越野幹人
メタマテリアルのつくりかた;光を曲げる「磁場」とベリー位相:宮丸文章