日本物理学会誌

第76巻 第7号

cover-21-07.png

■表紙の説明
トリウム229は原子核としては極めて低いエネルギーの励起状態(アイソマー状態)をもつことが知られている.そのエネルギーは約8.3 eVで,レーザー励起可能な唯一の原子核として,高精度な原子核時計などへの応用が期待されている.表紙の図は,トリウム229のエネルギー状態の一部を示したもので,基底状態とアイソマー状態間の原子核時計遷移(真空紫外光)を観測することが,原子核時計の実現に向けた重要なマイルストーンになっている.今回,高輝度放射光X線を用いた核共鳴散乱により,基底状態から第2励起状態を経由してアイソマー状態に遷移させることに成功した.これにより,大量のアイソマー状態を自在に生成することが可能となり,真空紫外光観測に向けて大きく前進した.詳細は本号に掲載されている,増田孝彦氏らの「最近の研究から」記事を参照のこと.


■巻頭言
『大学の物理教育』編集委員長に就任して  鈴木 勝 ...... 423

■解 説
ニュートリノの原子核レスポンス――二重ベータ崩壊と超新星ニュートリノの解明に向けて
江尻宏泰 ...... 426
場の量子論と量子情報――相対エントロピーとその応用  宇賀神知紀,西岡辰磨 ...... 435

■最近の研究から
固体におけるフォノンの流体力学  町田 洋 ...... 444
有機超伝導体λ-(BETS)2GaCl4の超伝導相近傍の相図  小林拓矢,河本充司 ...... 450
最小エネルギーをもつトリウム229アイソマー状態の人工的生成――原子核時計の実現に向けて
増田孝彦,吉見彰洋,山口敦史,吉村浩司 ...... 456

■JPSJの最近の注目論文から
3月の編集委員会より  宮下精二 ...... 462

■ラ・トッカータ
ロシア極東の物理グループ  中村 純 ...... 466

■学会報告
第76回年次大会(2021年) シンポジウムの報告  領域委員会 ...... 468

■追 悼
赤﨑 勇先生を偲んで  天野 浩 ...... 478

■新著紹介 ...... 479
相対論とゲージ場の古典論を噛み砕く;ゲージ場の量子論を学ぶ準備として:佐藤正寛