日本物理学会誌

第76巻 第9号

cover-21-09.jpg■表紙の説明
だるま落としと原子核スケールでの反応の不思議なアナロジー.高速の粒子によって原子核から核子(陽子・中性子)を勢いよく叩き出すと,原子核の中でその核子がどう振る舞っていたかがわかる.この反応はノックアウト反応とよばれる.だるま落としでもノックアウト反応でも,叩かれたパーツ以外が,そのパーツを叩き出されたことに気づかないまま終われば大成功.この手法は,それが核子であれ,核子の塊(クラスター)であれ,原子核の構成要素を調べる上で重要な手がかりを与える.現在,「叩けばわかる!」のスローガンのもと,様々なノックアウト反応を駆使して,天然には存在しない不安定原子核の"非常識"な構造を解明する取り組みが着々と進んでいる.詳細は本号に掲載されている緒方一介氏,上坂友洋氏の「解説」記事を参照のこと.


■巻頭言
PTEPの現状と今後  米谷民明 ...... 563

■解 説
ビスマス薄膜を通して「見る」表面物理学の新展開
伊藤 俊,松田 巌 ...... 566
不安定核から粒子をたたき出す――ノックアウト反応で見える新たな核構造
緒方一介,上坂友洋 ...... 575

■最近の研究から
多重SLE/GFF結合から動的ランダム行列理論へ  越田真史 ...... 584
深層ニューラルネットワークの解剖――統計力学によるアプローチ
吉野 元 ...... 589
細胞核はどこにあるか――アクティブ・ゲルと配置対称性の制御原理
坂本遼太,前多裕介,宮﨑牧人 ...... 595

■話 題
宇宙線反粒子探索計画GAPS  福家英之 ...... 601

■JPSJの最近の注目論文から
5月の編集委員会より  宮下精二 ...... 605

■ラ・トッカータ
大学封鎖,今昔物語  田中美栄子 ...... 609

■新著紹介 ...... 611
フラックス結晶育成法入門:村川 寛
磁性物理の基礎概念;強相関電子系の磁性:速水 賢

■会誌編集委員会より ...... 618