日本物理学会誌

第77巻 第1号

cover-22-01.png■表紙の説明
表紙の図は,ねじれ2層グラフェンからの高次高調波発生の模式図である.高次高調波発生とは,周波数Ωの光をターゲットに照射した際,その整数倍の周波数nΩの光が放射される非線形光学現象である.近年,固体試料からの極めて高い次数nの高調波発生が観測され,コンパクトな周波数変換素子としての応用や,非摂動論的な非線形応答の物理など様々な観点から注目を集めている.今回,2枚のグラフェンに人工的に相対的なねじれ角を与えて積層した「ねじれ2層グラフェン」からの高次高調波発生の理論解析がなされた.その結果,一枚のグラフェンや自然に存在する2層グラフェンでは発生しない次数nの高調波がねじれ角によって活性化されることが示され,次数選択則が動的対称性という非平衡対称性によって統一的に説明された.詳細は本号に掲載されている池田達彦氏の「最近の研究から」記事を参照のこと.[図は次の文献より転載:T. N. Ikeda, Phys. Rev. Res. 2, 032015(R)(2020).]


■巻頭言
学会の国際化とは  田島節子 ...... 1

■解 説
第一原理強相関計算による高温超伝導研究の最近の展開  三澤貴宏 ...... 4
多体状態表現のためのニューラルネットワーク      吉岡信行 ...... 14

■最近の研究から
鉄の表面近傍の特異な磁性を発見――原子一層毎に磁気モーメントの大きさが増減する
三井隆也,境 誠司,瀬戸 誠,赤井久純 ...... 23
ねじれ2層グラフェンの非線形光学応答の理論――動的対称性の観点から
池田達彦 ...... 29
トリチウムによるDNA損傷のメカニズム――二本鎖切断の蛍光顕微鏡観察およびシミュレーション
藤原 進,波多野雄治,中村浩章 ...... 35

■物理教育は今
国際物理オリンピック過去問シリーズ:
星の大きさを知る――国際物理オリンピック2009年の理論問題  並木雅俊 ...... 42

■JPSJの最近の注目論文から
9月の編集委員会より  宮下精二 ...... 47

■PTEPの最近の注目論文から  米谷民明 ...... 50

■ラ・トッカータ
物理学系VTuberの表話,裏話  北川俊作 ...... 53
"Nuclear Photonics"誕生――光と原子核が融合する新領域  余語覚文,民井 淳 ...... 55

■学界ニュース
第15回湯川記念財団・木村利栄理論物理学賞:西岡辰磨氏  高柳 匡 ...... 57

■新著紹介 ...... 57
X線・光・中性子散乱の原理と応用:根本文也
統計力学から理解する超伝導理論[第2版]:堤 康雅