日本物理学会誌

第77巻 第2号

cover-22-02.png■表紙の説明
表紙の図の一番上は,室町時代に備前(岡山県)で製作された日本刀の写真である.鎬と呼ばれる少し高くなっているところの線がはっきりと見られる.日本刀は,美しさと共に強靱性や切れ味などの特性も高く評価されているが,その製法や金属としての特性には明らかになっていない点が多い.我々はその金属学的特性を解明すべく,中性子ブラッグエッジ透過法を応用して結晶組織構造情報を非破壊で得た.中央の図は,この測定で得られた,鉄の結晶子の配向度合いを示したものである.鎬から棟側(下側)に向けて配向が強いことを示す赤色が多くなっている.また,下図は結晶子サイズを示すもので,サイズが大きいことを示す青色部分が棟側で多く,配向とサイズに相関が見られる.詳細は本号に掲載されている鬼柳善明氏の「最近の研究から」の記事を参照のこと.なお,下の2つの図は,Phys. Procedia, 88, 128(2017)からの転載である.


■巻頭言
日本物理学会の今後の課題  田村裕和 ...... 71

■解 説
天体核物理と高密度QCD物性の新展開  古城 徹 ...... 74

■最近の研究から
中性子結晶構造解析が解き明かす酵素反応    福田庸太,平野 優,井上 豪,玉田太郎 ...... 83
冷却原子気体における開放量子多体系の物理   中川大也,辻 直人,川上則雄,上田正仁 ...... 88
中性子・ミュオンを用いた日本刀の金属学的研究 鬼柳善明 ...... 93

■話 題
アイソスピンの符号の慣習をめぐって         内藤智也,萩野浩一,小林良彦 ...... 99
ビックデータ解析基盤(e-CSTI)を活用し「選択と集中」について考える  宮本岩男 ...... 103

■JPSJの最近の注目論文から
10月の編集委員会より      宮下精二 ...... 108

■PTEPの最近の注目論文から  米谷民明 ...... 110

■ラ・トッカータ
博士卒,就職活動シリーズ:
私の就職活動――博士課程から大学発スタートアップへ  西村光嗣 ...... 112

■学会報告
2021年秋季大会 シンポジウムの報告  領域委員会 ...... 114

■学界ニュース
2021年ノーベル物理学賞:眞鍋淑郎氏,Klaus Hasselmann氏
「地球気候を物理的にモデル化し,変動を定量化して地球温暖化の高信頼予測を可能にした業績」
山形俊男 ...... 122
2021年ノーベル物理学賞:Giorgio Parisi氏
「原子スケールから天体スケールまでの物理系における無秩序と揺らぎの関連の発見」
大関真之 ...... 123
第25回久保亮五記念賞:岡 隆史氏  佐藤正寛 ...... 123
第25回久保亮五記念賞:沙川貴大氏  上田正仁 ...... 124

■新著紹介 ...... 125
量子コンピュータによる量子化学計算入門:吉岡信行
ニュートリノ物理学:横山将志

■Jr.セッション委員会だより ...... 126