■表紙の説明
表紙の図は理化学研究所で開発された極低温静電型イオン蓄積リングRICEの写真である．銅合金等を材質とした真空チャンバー内には，イオンビームを周回させるための静電型レンズやディフレクターが高精度に配置されている．冷凍機を用いて装置全体を5 K以下に冷却することで10－10 Paの極高真空が得られ，数100秒以上もの長時間にわたりイオンビームを安定に蓄積することができる．最近，RICE（理化学研究所），CSR（Max-Planck原子核研究所），DESIREE（Stockholm大学），の3拠点で極低温イオン蓄積リングが稼働を始め，冷却分子イオンを用いた高分解能分光や反応ダイナミクス研究が注目を集めている．詳細は本号に掲載されている中野祐司氏らの「解説」記事を参照のこと．

■巻頭言
物理学会のありがたみ――未来を担う大学院生の皆さんへ
畠山　温 ...... 343

■解　説
極低温静電型イオン蓄積リングの開発と冷却分子イオンの物理
中野祐司，榎本嘉範，東　俊行 ...... 346

■最近の研究から
同位体シフトによる新物理探索――精密分光で迫る基本法則
田中　実，小野滉貴，山本康裕，高橋義朗 ...... 355
大きいフェルミ面と量子臨界点の協奏が生み出す奇妙な超伝導　　川崎慎司，鄭　国慶 ...... 361
反強磁性・フェリ磁性体の磁化ダイナミクス　　森山貴広，塩田陽一，小野輝男 ...... 367
超伝導量子パラメトロン――測定と制御の理論　　増田俊平，山本　剛，川畑史郎 ...... 373

■実験技術
軽元素ドープ系材料での新しい原子イメージング法――白色中性子ホログラフィー
大山研司，林　好一 ...... 379

■歴史の小径
物理学会設立前後の思い出　　霜田光一 ...... 387

■ラ・トッカータ
フランス研究教育よもやま話――地方都市の現場から　　木村太郎 ...... 391

■JPSJの最近の注目論文から
2月の編集委員会より　　宮下精二 ...... 393

■PTEPの最近の特集企画から　　米谷民明 ...... 396

■学界ニュース
2021年度仁科記念賞：有馬孝尚氏，木村　剛氏　　加倉井和久 ...... 398
2021年度仁科記念賞：瀧田正人氏　　　　　　　　　梶野文義 ...... 399

■新著紹介 ...... 400
現代量子力学入門：高橋和孝
ARPESで探る固体の電子構造；高温超伝導体からトポロジカル絶縁体：芝田悟朗