日本物理学会誌

第77巻 第10号

cover-22-10.jpg■表紙の説明
テクノロジーの進歩と到達エネルギーの増大に伴い,我々の世界の基本構成要素である陽子の内部構造の研究が進んでいる.陽子の内部構造の研究は,1970年代に陽子の電荷などの量子数を主に担う価クォークと呼ばれる内部粒子の存在が発見されることで始まった.近年は,より細かな構造が詳細に観測できるようになってきた.陽子の中身の細かさは,xと呼ばれるパラメータで表現されるが,現在では4桁に及ぶ範囲で測定が実施されている.表紙の絵は,研究の時代とxの測定範囲の広がり,その時,その時で見えてくる陽子の中身の様子を示したものである.小さいxの領域では陽子の量子数に陽に現れない海クォークやグルーオンが水の中の泡のように陽子の中でダイナミックに生成・消滅を繰り返しながら存在しており,その振る舞いは未だ謎が多い.詳細は本号に掲載されている中川格氏らの「解説」記事を参照のこと.なお,挿絵を作製してくれた京都大学iPS細胞研究所の大内田美沙紀氏に感謝する.


■巻頭言
10年目のPTEP  林 青司 ...... 653

■交 流
観測的宇宙論への機械学習の導入事例――エミュレーション技術とすばる望遠鏡への応用
西道啓博 ...... 656

■解 説
非相反相転移の物理  花井 亮 ...... 666
高エネルギー偏極陽子-陽子衝突で探る陽子のスピン構造 
後藤雄二,Ralf Seidl,中川 格 ...... 675

■最近の研究から
量子計算機で迫る場の量子論の新側面  本多正純 ...... 685

■実験技術
放射光メスバウアー時間領域干渉計法が明らかにする原子・分子のナノ-マイクロ秒ダイナミクス
齋藤真器名,山口 毅,長尾道弘 ...... 690

■物理教育は今
国際物理オリンピック過去問シリーズ:
国際物理オリンピック2017インドネシア大会の実験問題  松本益明 ...... 698

■JPSJの最近の注目論文から
6月の編集委員会より  宮下精二 ...... 702

■新著紹介 ...... 707
統計力学の形成:白石直人
グリフィス 電磁気学I、グリフィス 電磁気学II:宮島顕祐