第78巻 第5号
■表紙の説明
ブラックホールの振動による時空の歪みは,重力波として遠方へ伝搬する.その振動パターン(準固有振動)は,固定端をもつ弦の固有振動と同様に離散的かつ複数存在し,それらは各々,ブラックホールの質量と角運動量で決まる振動数と減衰率をもつと考えられている.この準固有振動は,ブラックホール近傍の時空構造などに繊細に依存するため,強重力の物理を検証・理解する上で,重要なプローブであると考えられている.表紙は,ブラックホール時空の振動に関するグリーン関数の離散的な極(赤点)が,ブラックホールの準固有振動各々と対応することを,概念図とあわせて図示したものである.詳細は本号に掲載されている大下翔誉氏の「最近の研究から」記事を参照のこと.
■巻頭言
これからについて,2023年冬に思うこと 所裕子 ...... 249
■最近のトピックス
室温付近超伝導 清水克哉 ...... 252
■現代物理のキーワード
結晶内電子状態のスピン自由度による縮退と分裂(Keyword: スピン軌道結合)
播磨尚朝 ...... 254
■最近の研究から
確率ビット向け微細磁性体の熱ゆらぎ 金井駿,深見俊輔,大野英男 ...... 256
ブラックホールの響きで探る極限重力の物理 大下翔誉 ...... 262
NMRで探るウラン系スピン三重項超伝導の物理 徳永陽,酒井宏典,北川俊作,石田憲二 ...... 267
ボルツマン統計に従うヘリウム4ガラスの量子ポリアモルフィズム 衣川健一 ...... 273
■ラ・トッカータ
超伝導を発見したのはオネスではない,カマリング・オネスである
大原繁男 ...... 279
「今の場所を離れる理由は,居心地が良いから」同級生はこう言った.
秋山良 ...... 281
■JPSJの最近の注目論文から
1月の編集委員会より 宮下精二 ...... 283
■学界ニュース
2022年度仁科記念賞:齊藤英治氏 高梨弘毅 ...... 287
2022年度仁科記念賞:小松英一郎氏 須藤靖 ...... 287
■新著紹介
基礎からの超伝導;風変わりなペアを求めて 水島健 ...... 289
■AAPPSだより ...... 291