日本物理学会誌

第79巻 第2号

cover-24-02.jpg■表紙の説明
鉄系超伝導体FeSeのSeサイトを同族元素のTeおよびSで一部置換した際の電子状態相図.FeSeは温度Tsで回転対称性が破れる構造相転移を起こすが,この相転移は結晶格子ではなく電子系が自発的に引き起こしている.これは液晶における自己組織化とのアナロジーから電子ネマティック相と呼ばれている.カラープロットは電子ネマティック相転移に関連した揺らぎの強さを表しており,Tsが低くなるにつれてこの揺らぎは強くなる.超伝導転移温度Tcは2つのドームを形作っており,3つの領域(SC1,SC2,SC3)に分けられる.SC3においては,Tsが消失する量子臨界点(QCP)付近でTcが最大となっている.これは温度TN以下で現れる反強磁性相よりも電子ネマティック相の方が超伝導の発現に重要であることを示唆し,ここでは新しい超伝導メカニズムが働いている可能性がある.詳細は本号に掲載されている石田浩祐氏,芝内孝禎氏の「最近の研究から」記事を参照のこと.


■巻頭言
思いは伝わっているか  橋本省二 ...... 51

■解 説
励起子絶縁体の物理――バンド間相互作用が導く秩序と集団励起
金子竜也,太田幸則 ...... 54

■最近の研究から
熱平衡な光,非平衡な磁性体  馬場基彰 ...... 63
Quantics tensor trainに基づく多スケール時空仮説と場の量子論  
品岡 寛,村上雄太,野垣康介,櫻井理人 ...... 68
量子液晶揺らぎによる超伝導電子対形成の検証  石田浩祐,芝内孝禎 ...... 73

■話 題
IPhO2023――国際物理オリンピック2023日本大会  早野龍五 ...... 79

■JPSJの最近の注目論文から
10月の編集委員会より  宮下精二 ...... 83

■PTEPの最近の注目論文から  林 青司 ...... 85

■学会報告
第78回年次大会(2023年) シンポジウムの報告  領域委員会 ...... 87

■新著紹介
放射線物理学  間嶋拓也 ...... 94
思考実験 科学が生まれるとき  村山 功 ...... 94