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米沢富美子第52期会長(1997年)去る1月17日逝去

公開日:2019年1月23日

米沢富美子先生のご訃報に接し,日本物理学会を代表して,謹んで追悼の辞を捧げます.

米沢先生は,1996年に副会長,1997年に第52期会長の重責を果たされた後も,代議員を務められるなど、日本物理学会の運営に多大な貢献をされました。米沢先生が会長に就任された時期は、我が物理学会が戦後新たなスタートを切ってから50年が過ぎ21世紀を控えた時期で、本会としても新たな時代に対応すべく、現在の課題ともつながる国際協力の必要性や物理学の社会での位置づけ等について当時からお考えがおありのようでした。くしくも時代が平成から新たな元号に代わる今日の日本の状況を鑑み、米沢先生と本会の深い縁に改めて思いを馳せております。

米沢先生は、1966年に京都大学大学院理学研究科物理学専攻にて博士課程を修了後、同年、京都大学基礎物理学研究所助手に採用され、1970年からは東京工業大学理学部の助手となりました。その後1976年には京都大学基礎物理学研究所助教授を経て、1981年に慶應義塾大学理工学部に移られた後は、助教授、教授として約20年にわたって同大学で教鞭をとられ、後進の育成に励まれました。2004年には同大学の名誉教授の称号を授与されています。

米沢先生は大学院に入学して以来、アモルファス物質の理論研究に取り組み、1967年「コヒーレント・ポテンシャル近似」と呼ばれる理論を発表し世界的な注目を集めました。以後、次々と成果を上げられ、アモルファス研究をリードされてきました。1984年に猿橋賞を、1989年には科学技術庁長官賞を受賞しました。その後もコンピューター・シミュレーションの可能性をさらに追究し「複雑液体」の研究でも学界をリードされ世界最先端レベルの研究を展開されました。1996年に発表された「新しい金属―半導体転移の機構の発見」においても世界的な反響を呼ぶなど、名実ともに理論研究の第一人者として活躍されたことをご記憶の方も多いのではないでしょうか。

米沢先生がお忙しい研究・教育活動の貴重な時間を割いて,日本物理学会の運営に力を注がれ,多大な貢献をされたことに改めて感謝いたします.

米沢富美子先生のご遺徳を偲び,慎んで哀悼の意を表しつつ,物理学の一層の発展を目指して努力を続けることをお誓いし弔辞とさせていただきます.

2019年1月22日

一般社団法人 日本物理学会
会長 川村 光