江口 徹 理事 1月30日逝去
公開日:2019年2月1日
昨年末までPTEP編集委員長を務めておられた、本会理事の江口徹先生には、病気療養中でしたが、1月30日午前10時29分永眠されました。先生のご訃報に接し,日本物理学会を代表して,謹んで追悼の辞を捧げます.
江口先生は、1975年に東京大学大学院理学系研究科博士課程を修了され、シカゴ大学とスタンフォード大学の博士研究員を経て、1978年にシカゴ大学にて助教授の職に就かれました。その後、帰国され1981年に東京大学理学部助教授、1991年には同教授となられました。2007年には京都大学基礎物理学研究所の所長に就任し退官までその重責を果たされ、2008年には東京大学名誉教授となられました。2012年には立教大学の特任教授として教壇に復帰し、2017年からは本会の刊行する英文オープンアクセス学術誌Progress of Theoretical and Experimental Physics(PTEP)の専任編集委員長に就任されました。昨今の国際学術誌を取り巻く困難な状況の中、1946年に湯川秀樹博士によって創刊されたProgress of Theoretical Physics (PTP、2012年終刊) の後継誌としての伝統を継承しつつ、さらに維持、発展させることに尽力されました。
江口先生は、数理物理学手法を用いた素粒子物理学研究において、重力理論やゲージ理論、超弦理論など多岐にわたる分野で先駆的な成果を挙げてこられました。例えば、ユークリッド領域におけるアインシュタイン方程式の新しい厳密解の発見等の御業績は広く知られています。長年にわたるそれらの功績に対して2009年には日本学士院賞・恩賜賞を受賞されました。江口先生は、そのお仕事を通して、数学分野でも広くその名を知られた先生でいらっしゃいました。本会は、1877年の創立以来1946年の現在の形での設立まで、数学とともに学会としては一体の活動を展開してまいりました。1946年以降は、日本物理学会と日本数学会に分かれ、それぞれの歴史を刻んでいますが、そのような中、江口先生が体現された素粒子理論と数学を跨ぐようなご活躍は日本の数理物理研究に幅と厚みを持たせるとともに、かつてのような数学と物理の交流をも促進し、日本全体の学術レベルの底上げにつながるものだったのではないでしょうか。
江口先生が人生を全うされる最後の最後まで、日本物理学会が刊行する学術誌の編集という激務を通して、本会と、ひいては日本の科学界に多大な貢献をされたことに改めて感謝いたしつつ、ここに弔辞とさせていただきます.
2019年2月1日
一般社団法人 日本物理学会
会長 川村 光
通夜ならびに葬儀、告別式は下記のとおり執り行われます。
記
通 夜:2月8日(金) 午後6時~午後7時
葬儀、告別式:2月9日(土) (葬儀、告別式は近親者のみで執り行われます)
場 所:愛染院会館(東京都練馬区春日町4-17-1 電話03-5241-1567)
喪 主: (御令兄) 江口 寛