64-65期男女共同参画推進委員会 委員長 松尾由賀利
2009年4月
男女が互いにその人権を尊重し、性別に関りなくその個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現は、少子高齢化の進展や社会経済情勢の急激な変化 を背景に、緊要の課題として取り組まれるようになりました。特に理科系分野においては、若者の理科離れというもう一つの深刻な状況が加わり、他分野にも増 してその必要性が強く認識されるに至っています。
男女雇用機会均等法の施行から20余年、男女共同参画社会基本法の制定から10年近くが経過 し、この間に社会で活躍する女性の割合は確かに増加してきました。道なき道を切り拓いてきた先人の時代に比べると、あらゆる分野において生き生きと活躍す る女性の姿を目にする機会が増えています。
にも関らず、理系、特に物理学の分野において、日本の女性研究者が世界的に見ても極めて少ない状況は 変わっていません。人材の育成は時間のかかることですから、もちろん一朝一夕に改善する問題ではありません。しかし、研究者や理系の職種を目指す人材がそ の継続が困難であるが故に道半ばで離れることが続けば、事態はいつまでも変わらないでしょう。2002年に設立された日本物理学会男女共同参画推進委員会 は、歴代委員長のもとこれらの問題に取り組んできました。他学会と連携した大規模アンケートによる実態調査とそれに基づいた提言のまとめは政府を動かし、 女性研究者支援の施策が動き始めました。さらに女子中高生を対象とした科学塾を通した啓発活動など、多くの成果をあげてきたと言ってよいでしょう。
最終的には、このような法律や委員会が不要になる社会が形成されることが望ましいのだと私自身は思います。残念ながらゴールまでの道のりはそれほど近いも のでなく、息の長い取組みが必要となりましょう。特に、男女双方における社会的な意識の改革は時間のかかる問題です。しかし、研究や仕事の継続を困難にす る、女性に起こる問題は男性にも起こる問題であり、逆もまた然りです。今の社会の姿とかくあるべき姿を見合わせたときに、かくあるべき姿に向かってその間 を埋める地道な努力が欠かせません。
学会は専門の学術を議論し、高めあうために集うコミュニティーであると同時に、その成果を社会に広める任 を負う社会的存在でもあります。学会の委員会としてこの問題に取り組む意義と責任を自覚しながら、男女に関りなく物理学に携わる人材が生き生きと活躍する 社会、ひいては誰もが自分の将来にビジョンを持てる社会の実現に向けて、学会として何ができるか議論を深め、活動に繋げていきたいと思います。どうかよろ しくご支援のほど、お願い申し上げます。