IUPAP

IUPAPの紹介

IUPAPの概要

IUPAPは1922年に日本をはじめとする13ヵ国によってブリュッセルにて設立された物理学の国際連合です。現在では60以上の国及び地域のアカデミーで構成されています。その目的は、物理学の国際的発展に尽力し、物理学についての国際的協調を推進するとともに、人類に関わる問題解決のために物理学の応用を支援することです。IUPAPの創立には、長岡半太郎博士が多大な貢献を果たし、その後、山口嘉夫氏(1993-1996)、潮田資勝氏(2005-2008)が会長を務め、福山秀敏氏(2002-2005)、前川禎通氏(2008-2011)、河野公俊氏(2011-2014)、東俊行氏(2014-2017)、現在は梶田隆章氏(日本学術会議会長)が副会長を務めております。2017-2021年には、専門分野別の委員会(Commission)の副委員長(2名)、書記(3名)を含む日本人15名が委員会メンバーとして活躍しています。このように、IUPAPは、我が国とは創立時よりとても深い関係のある国際連合です。

IUPAPの組織と運営

IUPAPには各国の物理学会や科学アカデミーを窓口(リエゾン)として、2022年時点で60か国が参加しています。日本のリエゾンは日本学術会議です(学術会議のIUPAP分科会の議事録が公開されています1))。冷戦時代にIUPAPは東西の物理学者の交流に重要な役割を果たしたことが知られていますが2)、現在では、国際的な対話や共同研究の推進を担うとともに、物理定数や単位の標準化、若手育成、男女機会均等、産業とアカデミアの連携、物理教育などの議論が盛んに行われています。
 
IUPAPは、会長、前会長、次期会長、その他の担当理事で構成される理事会(Executive Council)と、その下に置かれた委員会 (Commission)、連携委員会 (Affiliated Commission)、作業部会(Working Group) から構成されています。

2021年までは3年に一度開催される総会により全体が運営されていました。2021年の10月に開催された総会においてスイスに拠点を移すことが決定し、スイス法人化とパンデミックを契機として、対面で開かれる総会は3年に一度ですがオンラインの総会が毎年開かれることとなりました。
 
委員会(Commission)としては、物理学を構成する各領域を担当する、統計物理(C3)、宇宙線(C4)、低温物理(C5)、生物物理(C6)、半導体 (C8)、磁性 (C9)、固体物理 (C10)、素粒子・場の理論(C11)、原子核物理(C12)、原子分子物理 (C15) 、プラズマ物理 (C16)、レーザー物理・光学 (C17)、数理物理 (C18)、天体物理 (C19)、計算物理 (C20)のほか、政策と財政(C1)、単位や基本定数 (C2)、開発途上国での物理学振興(C13)、物理教育(C14)を担当する19が置かれています3)。委員会は、国際会議を主催・共催し、優れた若手研究者を表彰するとともに、ニュースレターやウェブページによって分野の交流を図っています。各委員会は、委員長、副委員長、書記の3人を含め14人で構成されています。次期委員については、各国のリエゾンから提出される候補者リストをもとに、各委員会 からの意見と男女バランスや 国別バランスを考慮してExecutive Council & Commission Chairs 会議で議論を行い、リエゾン代表者が出席する総会で決定されます。各委員の任期は1期3年ですが、慣例として2期務めることとなっています。

連携委員会(Affiliated Commission)としては、国際光学委員会(AC1、International Commission of Optics(ICO)と提携)、一般相対性および重力に関する国際委員会(AC2、International Society on General Relativity and Gravitation (ISGRG)と提携)、国際音響学委員会(AC3、International Commission for Acoustics (ICA) と提携)、国際医療物理委員会(AC4、International Organization on Medical Physicsと提携)の4団体に加えて、学生委員会(AC5、International Association of Physics Students(IAPS)と提携)、物理史と哲学の連携委員会(AC6、the International Union of History and Philosophy of Science and Technology/Division of History of Science and Technology (IUHPST/DHST))が昨年度の総会以後、IUPAPの活動に取り入れられています。

作業部会(Working Group)は、時々の課題解決のために設置され、現在は15の作業部会(WG)が置かれています。たとえば、男女共同参画(W5)、エネルギー問題(W12)、物理学と産業との連携など社会の発展に関わる問題が論じられています。昨年の総会において、新しく研究倫理(WG18)、量子科学技術(W19)に関する作業部会が設置されました。IUPAP100周年に関してWG17が置かれ、日本からは野尻美保子物理学委員会委員長が参加しています。
 
1) http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/buturi/giji-iupap.html
2) 山口嘉夫 (1993) 日本物理学会誌 48, 368-371. DOI: 10.11316/butsuri1946.48.5.368.
3) https://iupap.org/who-we-are/internal-organization/commissions/

IUPAPの活動

IUPAPは、その使命として「物理学の世界的な発展を支援すること」、「物理学における国際協調を促進すること」、「人類に関わる問題解決に向けた物理学の応用を援助すること」としています。そのために、上記のような常設の委員会、時勢に応じて他国際機関と提携した連携委員会や作業部会を設置して目的の遂行に当たっています。例えば、各物理学分野の発展、人材育成、開発途上国での物理学振興など、国際的に物理学の発展に努めています。当今の問題として、男女共同参画、研究倫理、SDGsなどのほか、物理学が関与する他分野、例えば最先端医療などに関連する問題なども扱っています。我々の生活に関係深いところとしては、2018年には130年ぶりに重さの単位系の新しい定義法が制定がされましたが、こうした物理単位系の設定もIUPAPの重要な役割です。 そのほか、2015年に理化学研究所のグループが原子番号113番の新元素をニホニウムとして命名されましたが、これもIUPAPとIUPAC(国際純粋・応用化学連合) の合同作業によるものです。

【物理学の発展支援】その一つとして、IUPAPは国際会議の開催支援を行なっています。日本で開催された多くの物理学に関連した国際会議もその支援を受けています。直近の例としてはパンデミックの影響による予定変更を伴いながら、2023年には統計物理(2カ所)、2022年には低温物理(2カ所)と原子分子物理についての国際会議があり、2018年には、低温物理、宇宙線物理に関する国際会議が開催されています。そのほか、ノーベル賞を受賞した素粒子実験の分野に関連して、ニュートリノ実験の国際推進を目指すプロジェクト「ニュートリノパネル」が 2017年に発足しています。IUPAPの3つ委員会(C4,C11,C12)と作業部会(WG1,WG9,WG10)に跨る分野を横断するプロジェクトで、梶田隆章氏(日本学術会議会長、ノーベル賞受賞者)が座長の一人として統括しています。

【人材育成】IUPAPは連携委員会として昨年度の総会においてIAPS(国際学生連盟)を設立、若手育成に関する活動の強化を進めています。また、各物理分野に対応する委員会では、博士号修得後の8年までの優秀な研究者の顕彰をIUPAP若手科学者賞(IUPAP young scientists prize)として行ってきました。昨年度の総会では「若手」の意味をより明確にするために名称を今後IUPAP新人賞(early carrier prize)と改めることが決議されています。ちなみに日本からの若手科学賞受賞者として2011、2012、2013、2015、2018年に、合わせて7名の日本人研究者が受賞しています。2021年にはプラズマ物理学分野から受賞者が出ています。

【男女共同参画】IUPAPは科学における男女共同参画に向け、作業部会(WG5)を設置するほか、SCGES (Standing Committee for Gender Equality in Science)に貢献し、その活動を強化 しています。SCGESは数学、計算機科学、自然科学における男女のバランスを調査し、男女共同参画を実現するために2020年9月に発足した国際団体の連合プロジェクトです。IUPAPはこのプロジェクトにおいても重要な役割を果たす主要な国際学術連合です。IUPAPの作業部会からは男女共同参画に関するWaterloo憲章を提唱しています。また、ISCとも協力し、科学分野の女性参画の基本データも作成しています。

【科学倫理】研究不正など科学倫理の問題が最近国際的に問題となっていますが、連携委員会としてIUHPST (物理史と思想に関する国際連合)を設立し、科学不信につながる風潮(はげたかジャーナルの台頭など)の是正に努めています。

【社会貢献】物理と産業の連携の深化を議論するほか、水素やバイオマスなどのエネルギーについて検討しその概要を公開しています。SDGsに関連しては、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に向けたシナリオの一つとしてユネスコが2022/2023年を「持続可能な発展のための国際基礎科学年(IYBSSD2022)」に制定しました。IUPAPは、IUPAP100周年に加えて、他の国際アカデミーと協働してIYBSSD2022の推進を主導しています。なお、これまでもIUPAPは科学関連の国際イベント、国際光年(IYL 2015)、国際周期表年 (IYPT 2019)などに参加し、SDGsを支援してきた実績があります。