日本物理学会誌

第74巻 第10号

cover-19-07.png

■表紙の説明
表紙は,2次元格子上の量子ウォークの典型的なモデルとして研究されているグローヴァーウォーク(上図)とアダマールウォーク(下図)の確率分布である.グローヴァーウォークは一様な推移規則に基づくモデルであっても局在化と拡散が共存するモデルであり,アダマールウォークは通常の単純ランダムウォークに対応する基本的なモデルである.ランダムウォークの量子版とみなせるモデルの一つである量子ウォークは,数理モデルとしての興味に留まらず,例えば,量子探索アルゴリズム・放射性廃棄物分離への応用可能性・トポロジカル絶縁体との対応が明らかになるなど,理論・実験を問わずに研究の裾野を広げており,量子計算の基本的モデルとして近年注目を集めている.詳細は本号に掲載されている井手勇介氏,今野紀雄氏の「解説」記事を参照のこと(図は横浜国立大学大学院理工学府博士後期課程2年齋藤渓氏が作成).

■巻頭言
7年目のPTEP  米谷民明 ...... 679

■解 説
量子ウォークによる高速探索       井手勇介,今野紀雄 ...... 682
量子情報の非局所化とブラックホール情報損失問題  吉田 紅 ...... 691
プランク定数にもとづくキログラムの新しい定義   藤井賢一 ...... 700

■最近の研究から
超弦理論と一般相対論をつなぐ――Double Field Theory  酒谷雄峰 ...... 709
電界効果で界面の磁性を制御する  三輪真嗣,鈴木基寛,辻川雅人,野崎隆行 ...... 714
光の連続性を活用した量子誤り耐性向上手法  福井浩介,富田章久,岡本 淳,藤井啓祐 ...... 720
高速回転する流体――クォーク・グルーオン・プラズマの渦度  新井田貴文,江角晋一 ...... 727

■JPSJの最近の注目論文から
最近出版された特集企画論文から  宮下精二 ...... 733

■追 悼
田中正先生を偲んで  九後太一 ...... 734
海部宣男さんを悼む  林 正彦 ...... 735

■新著紹介 ...... 736
定量生物学;生命現象を定量的に理解するために:斉藤 稔
QUANTUM MONTE CARLO METHODS; Algorithms for Lattice Models:諏訪秀麿