JPSJ

Journal of the Physical Society of Japan (JPSJ)は、日本物理学会が刊行する月刊誌で、創刊以来、レベルの高い論文を出版してきました。各号は、Full Papers, Letters等のオリジナル論文から構成され、随時、Invited Review Papers, Special Topicsを掲載しています。最新の論文は、オンライン公開後、約1か月間無料でご覧いただけます。[> JPSJホームページ]

注目論文 (Papers of Editors' Choice)

  • 毎月の編集委員会では、注目論文(Papers of Editors' Choice)を選んでいます。その日本語による紹介文を日本物理学会誌とJPSJ注目論文に掲載しています。注目論文はオンライン公開後1年間無料で閲覧できます。関連した話題についての解説がJPSJホームページの「News and Comments」覧に掲載される場合もあります。

JPSJニュースレター

  • 年次・秋(春)季大会の開催にあわせてニュースレター(日本語)を発行しています。
    JPSJニュースレター最新号(No. 41) をウェブ公開しました。

    また、これまでに発行したニュースレターはこちらからご覧いただけます。

最新のJPSJ注目論文

光照射に誘発される電子状態の変化は古くから研究されているが、光照射によって電子状態の対称性を直接的に変調することが近年注目を集めている。本研究では、励起光を照射したグラフェンの鏡映対称性が理論的に調べられることによって、円偏光や直線偏光を使ってグラフェンの結晶が持つ2種類の鏡映対称性を破ることができることが発見された。この鏡映対称性の破れは非対角電気伝導度が有限になることで特徴付けられる。本研究成果は、新しい光誘起現象や光制御機構の発見につながる。

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原論文は以下からご覧いただけます
Light-Induced Mirror Symmetry Breaking and Charge Transport
Naoya Arakawa, Kenji Yonemitsu, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 084701 (2024).

スピネル型の結晶構造を持つAlV2O4では、平均価数+2.5 の V が三量体と四量体を形成する特異な格子変形が報告されて注目を集めてきたが、その起源は未解明であった。本研究において、AlV2O4の電子状態を硬X線光電子分光で調べたところ、V が+2 価と+3 価に価数分離していることが判明した。三量体および四量体の V-V 結合を形成する V の 3d 軌道を解析することによって、d2 電子配置となる+3 価の V が三量体を形成し、d3 電子配置の+2 価の V が四量体を形成することでAlV2O4の格子変形が説明できることがわかった。


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Charge Disproportionation for Trimerization and Tetramerization in Spinel-Type AlV2O4
Mario Okawa, Ryota Shimoyama, Ryohei Takayanagi, Akira Yasui, Eiji Ikenaga, Takuro Katsufuji, Tomohiko Saitoh, and Takashi Mizokawa, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 074709 (2024)

磁性原子のスピンが渦巻き状に配列して磁気スキルミオン格子と呼ばれる特異な磁気構造を作ることがある。ここで重要な働きを担うと考えられてきたのが、結晶が反転対称性を持たないときに生じるスピン間の反対称交換相互作用である。ところが、今回発見されたEuNiGe3の磁気スキルミオン格子では、反対称交換相互作用がもたらす本来のらせんヘリシティ(巻き方)を逆転させて、ヘリシティを一つに統合させていることがわかった。反対称交換相互作用を凌駕する安定機構が存在することを示すものであり、従来の考え方に変革を迫る重要な結果であるといえる。

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Helicity Unification by Triangular Skyrmion Lattice Formation in the Noncentrosymmetric Tetragonal Magnet EuNiGe3
Takeshi Matsumura, Kenshin Kurauchi, Mitsuru Tsukagoshi, Nonoka Higa, Hironori Nakao, Masashi Kakihana, Masato Hedo, Takao Nakama, and Yoshichika Ōnuki, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 074705 (2024)

強トロイダル状態は、空間反転対称性と時間反転対称性が同時に破れている特殊な物質状態であり、光の入射方向の反転により吸収が変わる方向二色性といった多彩な物理現象を引き起こす。それゆえ、強トロイダル状態を如何にして実現するかは興味ある問題である。今回、PbMn2Ni6Te3O18の反強磁性相において、強トロイダル状態の形成を示す方向二色性が観測された。この結果と対称性の議論から、結晶構造の回転歪みと、反平行スピン対をベースとした"偽キラル"な反強磁性の組み合わせが、強トロイダル状態を実現する新たな指針となることが示された。

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原論文は以下からご覧いただけます
Ferrotoroidic State Induced by Structural Rotation and Falsely Chiral Antiferromagnetism in PbMn2Ni6Te3O18
Ryoya Nakamura, Ippo Aoki, and Kenta Kimura, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 063703 (2024).


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